来年1月からつみたてNISAがスタートすることに伴い、個人型確定拠出年金(イデコ)とどちらを使ったほうがいいのかという問い合わせが増えています。
税制メリットの観点でいえば個人型確定拠出年金(イデコ)のほうが大きいといえるのですが、個人型確定拠出年金(イデコ)には60歳まで引き出せないという制度上の大きな欠点があるので、年齢や今後のキャッシュフロー(収支予想)といったそれぞれのライフプランを確認しないとわからないというのが正直なところです。
60歳になるまで引き出すことができない個人型確定拠出年金(イデコ)
日本の個人型確定拠出年金(イデコ)は米国の個人退職勘定(IRA)を参考に制度が作られています。
しかし、米国の個人退職勘定(IRA)がペナルティ付きではあるものの途中解約できるのに対して、日本の個人型確定拠出年金(イデコ)は原則60歳になるまでは引き出すことができません。
途中で引き出すことができるのは被災した場合などに限られるため、60歳になるまでに生活費や子どもの教育資金、医療費などの資金が必要になったとしても、個人型確定拠出年金(イデコ)で貯めている資金を使うことはできないのです。
終身雇用のシステムが崩壊して、先行き不透明な時代において、このような60歳になるまでは引き出すことができない制度を使うのは大変怖いような気がします。
60歳になるまでに資金の不足が発生することがないか
そのため個人型確定拠出年金(イデコ)の活用にあたっては、まずはしっかりとライフプランを作成して世帯の今後のライフイベントを確認しながらキャッシュフロー・シミュレーション(収支予想)を行い、60歳になるまでに資金の不足が発生することがないか十分な検証を行う作業が不可欠であると思います。
たしかに個人型確定拠出年金(イデコ)については、掛金が全額所得控除の対象になり、運用益も非課税、さらに受け取る時の税制優遇措置があるので資産形成の手段としての魅力は大きいのですが、このような途中で引き出しができないデメリットがあるので、あくまでも老後に向けた資産形成の手段であることを認識して、その利用については慎重に行うように心掛けてもらいたいものです。
ファイナンシャルプランナー(FP)として日頃からお客様のライフプラン作りを行っている立場から伝えたいことですが、一般的なサラリーマン家庭の多くは子どもの教育資金の不足が発生します。
これは奨学金を借りている大学生の割合が5割を超えている(独立行政法人日本学生支援機構「平成26年度学生生活調査」)ことからも明らかです。
たとえ奨学金に頼らなかったとしても、教育ローンを借りたり、住宅ローンなどの返済が厳しくなったりしている世帯は少なくないと思います。
FPの一部には個人型確定拠出年金(イデコ)の掛金額は年1回変更ができるため、家計が厳しくなった場合には掛金額を下げたり、掛金の拠出を停止すればいいという意見もあるようですが、それは支出をコントロールできるということで、貯めた資金を活用できるものではありません。
途中で解約して引き出せるつみたてNISA
60歳になるまでに資金の不足が想定される場合には、いつでも解約を行うことができる通常の課税口座か、または運用益に対する非課税メリットを使いながら、万一の場合に途中で解約を行うことができるつみたてNISA(またはNISA)を優先して活用するべきだと思います。
※通常のNISAも、いつでも解約をすることができます。
解約を行うことは、つみたてNISAの本来の目的である長期にわたる資産形成効果を損なうことに繋がってしまいますが、それでもイザという時に引き出せる安心感は大きいのではないでしょうか?
ジュニアNISAには払い出し制限
もしも大学などの進学資金準備にフォーカスをしたい場合は、ジュニアNISAの利用も視野に入れましょう。
ジュニアNISAについては、一人当たり年間80万、5年間の合計で400万の非課税枠が設けられています。
しかし、通常のNISAと違って、ジュニアNISA は3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日までの払出し制限が設けられています。
そのためジュニアNISAの資金は、中学校や高等学校の入学資金等には利用できませんが、大学や専門学校などへの資金準備には向いています。
選択肢が広がる中、ライフプランに合わせて選ぶ
このように個人の資産形成の選択肢が広がる中、個人型確定拠出年金(イデコ)・NISA・ジュニアNISA・つみたてNISAと通常の課税口座を含めて、どの制度を使うことが最もよいのかを考えなくてはいけません。
もちろん複数の制度を組み合わせて活用することも大切になります。
60歳までに必要な資金はつみたてNISA、60歳以降に必要となる資金は個人型確定拠出年金(イデコ)でと、両方の制度を組み合わせて上手く活用するのがベストだと思います。
そのためにもライフプランの検討から入ることは大切ですね。
そしてとくに先行きが不透明な時代であるため、税制メリットにばかり目を向けないで、引き出すことができるという流動性の観点から制度を選択することを意識してもらいたいものです。
久保 逸郎
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