国際通貨基金 (IMF)は2020年4月14日に、最新の世界経済見通しを発表しました。
IMF の世界経済見通しは世界の主要機関の予測の中でも、最も注目度が高く、また今回はとくに新型コロナウイルスの感染拡大の影響を反映させたものになるため、世界中がその内容を注目していました。
2020年の世界経済成長率はマイナス3%の予想
今回の発表では、IMFは世界全体の2020年の成長率をマイナス3.0%と予想しています。
1月時点の予想ではプラス3.3%と見込んでいたので、6.3%も大幅に下方修正したことになります。
成長率がマイナスになるのは、リーマンショック後の2009年のマイナス0.1%以来。
2020年の世界経済は、1929年以降に世界を深刻な不況に陥れた大恐慌以降では、最悪の景気後退になる可能性が非常に高いとの危機感を示しています。
各国の状況はというと、これまで経済が堅調で、世界経済の牽引役になってきた米国の経済成長率は2019年のプラス2.3%から、2020年はマイナス5.9パーセントまで急落するとされており、第二次世界大戦後の1946年以来の大幅な落ち込みとなる見通しです。
また、世界第二位の経済大国である中国は、2020年の経済成長率は1.2%でかろうじてプラス圏はキープするものの、1月の予想からは4.8%も引き下げられ、こちらも大幅な減速が見込まれています。
現時点(2020年4月16日現在)で米国に次いで新型コロナウイルスによる死者が多い欧州は、大変落ち込みが大きく、2020年の経済成長率はドイツがマイナス7.0%、フランスはマイナス7.2%、イタリアはマイナス9.1%、スペインはマイナス8%と大変厳しい見通しになっています。
そして日本ですが、2020年の経済成長率はマイナス5.2%で、欧米に比べてマイナス幅は小さく感じますが、2021年の成長率は3.0%にとどまることが見込まれており、欧米に比べてやや弱い回復になりそうです。
日米欧の経済への影響は4~6月期が最悪期
回復の時期については、 IMF は新型コロナウイルスによる日米欧の経済への影響は4~6月期が最悪期で、2020年後半から景気は持ち直すと見ているようです。
2021年には回復が軌道に乗り、世界全体の成長率は5.8%まで高まる見通しです。
リーマンショックの翌年の2009年はマイナス0.1%の成長でしたが、翌2010年はプラス5.4%のプラス成長になったように、今回も落ち込んだ分だけ、大きな回復が見込まれています。
ただこの予測も IMF によれば、基本シナリオといえるもので、今後の状況次第では相当な不確実性が存在するとのこと。
新型コロナウイルスの世界的流行と拡散防止措置が長引く、新興市場国と発展途上国の経済がさらに深刻な打撃を受ける、金融環境のタイトな状態が続く、あるいは企業倒産や失業の長期化の結果、危機の爪痕が烙印のように消えずに影響が広範囲に残ることがあれば、成長率はさらに予想を下回る可能性が高いとされています。
そのため IMF は2020年に経済活動が再開する基本シナリオ①に加えて、②2020年中の感染拡大の封じ込めに失敗したケース、③新型コロナウイルスの感染拡大の封じ込めには成功するものの、2021年に再び流行するケース、④封じ込めにも失敗して2021年に再流行の4つに分けて経済見通しを分析しています。
封じ込めにも失敗して2021年に再流行という最悪のシナリオ④になった場合、2021年の世界経済は基本シナリオより8%も縮小するとのこと。
つまりは今後の新型コロナウイルスの感染拡大次第で状況は変化するため、不確実な部分が多いということです。
そのため投資家としては慎重なスタンスを崩すべきではないと思います。
久保 逸郎
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