多くの世帯の家計の支出において、大きな割合を占めているのが保険料です。
日本人は「世界一の保険好き」と言われていますが、保険料の支出が大きくなってしまっていて、あまり貯蓄が出来ていないという世帯も珍しくありません。
それに労働者不足による賃金上昇圧力の高まりや資源価格上昇等によって足元では少しずつインフレ(物価の上昇)が起こり始めていますが、保険にはインフレに弱いという大きな欠点がありますし、また、近年のような超低金利の環境では保険に貯蓄性を期待するのは無理があります。
保険に貯蓄性を求めるという前時代の常識は早急に捨てて、「保険は掛け捨て」と割り切り、本当に必要な補償だけに絞って加入することで、少しでも無駄な保険料の支出を抑えることは老後資金の準備のためにも大切なことです。
それでは無駄な保険料をなくすにはどのようにすればいいのでしょうか?
本当に正しい保険の活用方法とは
本当に正しい保険の活用方法とは、到底貯蓄では補えないような大きな経済的リスクに対して、保険に加入して対価となる保険料を支払うことで、そのリスクを保険会社に移転して備えようとするものです。
したがって万一の際の経済的リスクが大きいものから順番に保険加入を検討していくのが正しい方法になります。
但し、いくら経済的リスクが大きくても、発生する確率が高いリスクについては、保険を活用して備えるのではなく、起こりうるべきこととして考えて貯蓄等の手段で資金準備を行って備えたほうがよいのではないでしょうか?
これは近年のような超低金利の状況では、保険に貯蓄性を求めることができず、魅力的な(貯蓄性)商品が見当たらないことも理由の一つです。
そのため個人が加入する保険の優先順位としては、発生する確率はそれほど高くないものの、万一起きてしまった時の経済的リスクがより大きなものから順番に保険に加入していくというのが正しいですし、この考え方で本当に必要な保険はなにかと考えれば、きっと無駄な保険に加入しないで済むことでしょう。
この観点で今回は損害保険から考えてみたいと思います。
自賠責保険の補償だけでは足りないため、自動車保険の加入は必須
自動車を運転して事故を起こした時の経済的リスクは数百万から数千万、場合によっては1億円以上の賠償責任を負うことも考えられます。
とても大きな経済的なリスクですので、自賠責保険の補償だけでは足りず、そのリスクに備えるための自動車保険(任意)への加入は必須といえます。
補償として対人無制限はもちろんのこととして、できれば対物補償についても無制限で加入しておきたいものです。
また、近年のリスク細分の流れから、事故起こしてしまうことが多い若者や高齢者の保険料は高くなる傾向にあり、その影響で任意の自動車保険に加入していない無保険車が増えてきています。
万一事故を起こしてしまった時に、その相手が任意の自動車保険に加入していないと、保険会社同士の処理で事故を処理することができません。
そのためできることなら弁護士費用特約も付帯しておいたほうがよいでしょう。
火災保険に加入する際は水害のリスク確認を忘れずに
火災で自宅を失った時の経済的損失は数百万、数千万以上になると思います。
一般的には貯蓄で補えないほどの大きなリスクと考えておいたほうがよいので、火災保険に加入することも、さきほどの自動車保険と同様に必須と考えておいたほうがよいでしょう。
すでに自宅を自己所有していて火災保険に加入していないケースは少ないと思いますが、家財の補償を付けていないケースはたまに見かけます。
万一の時にすべての家財道具一式を揃えると数百万以上の費用がかかるものです。場合によっては1千万円以上の費用が発生するかもしれません。
できれば火災保険と一緒に家財の補償も加入しておきたいものです。
また、とくに近年は地球温暖化の影響で災害のリスクが高まってきています。
ハザードマップ等で住んでいる地域が水害のリスクがあると予測されている場合には、しっかりと水害のリスクにも備えておきたいですね。
ハザードマップ等に載っているにもかかわらず、ニュースの報道などで「知らなかった」「聞いていない」と言って、その責任の所在を自治体などに求めている姿を見かけることがありますが、被災の責任を自治体などに求めてしまうのもいかがなものでしょうか?
毎年のように事前の想定を超えるような事態が起きており、災害の規模が大きくなっている状況なので、そのようなリスクはあくまでも自己責任として考えて備えておく必要があると思います。
地震のリスクを他人事として考えない
近年は日本各地で大きな地震が発生しています。
熊本県や鳥取県など、これまであまり大きな地震が起きていない地域でも、突然大きな地震が発生していますし、東南海地震のような大地震が発生するリスクも年々高まってきていると言われていますね。
地震保険は建物と家財の部分については火災保険の50%までしか補償されないので、地震保険に加入しても自宅を再建できないという声を聞くことがありますが、地震保の本来の制度の目的は自宅の再建のためにあるのではなく、被災した時の生活の再建費用だということを忘れてはいけません。
そのため日本のどこにいたとしても、万一家を失ったとしても経済的に困ることがないという方や、建物の構造的に地震のリスクが少ないという方など以外は、基本的に地震保険は加入しておくべき補償だと思われます。
しかし、地震保険の世帯加入率は、2017年度で31.2%にとどまっています(損害保険料算出機構)。
ついつい「自分は大丈夫」と考えてしまうのが人間の心理ですが、地震のリスクについては他人事とは考えないほうがいいでしょう。
個人賠償責任保険は加入しておくべき保険の一つ
「訴訟社会」といわれる米国ほどではないものの、年々日本も訴訟に対して抵抗を持つ方が少なくなってきており、個人が賠償責任を負ってしまう機会が増えてきています。
少ない保険料で賠償責任を負ってしまうリスクを回避できるため、個人賠償責任保険は加入しておくべき保険の一つだと考えられます。
近年は損害保険会社各社が個人賠償責任保険単体での販売を控えるようになったため、基本的には自動車保険や火災保険などに特約で付帯する形が多くなりますが、一部のクレジットカードや会員組織などでは個人賠償責任保険単体で加入できるところもあります。
とくに個人賠償責任保険に加入していれば自転車で相手を決まった場合などに備えることができるため、自身やご家族が自転車に乗る場合は入っておきたい補償ですね。
この他にはケガのリスクが高いスポーツ等を行っている人は傷害保険に加入したほうがいいですし、海外旅行に行く人は海外旅行保険に入る必要があります。
そのような特別なケースを除けば、個人が損害保険に加入して備えておかなくてはいけない大きなリスクというのは、基本的にはこれくらいではないでしょうか?
この機会に無駄な補償にまで加入していないかどうか、ぜひチェックしてみてください。
次回は同じ観点で生命保険について触れてみようと思います。
久保 逸郎
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