資産保全

富裕層がお金を預けるスイスに学ぶ、グローバル分散投資の三原則

前回の『富裕層がお金を預けるスイスに学ぶ、資産保全の3つのポイント』では、資産保全の鉄則として下記の3つのポイントを挙げました。

  • グローバルの観点で資産を保全する
  • グローバル分散投資を行う
  • 割安な資産に投資を行う

今回はその中のグローバル分散投資を行う際に、大切にしておかなくてはならない点を紹介します。

人口が伸びている地域に投資を行う

経済の規模を表す指標にGDP(国内総生産)があります。
これは国内で新しく生産された商品やサービスの付加価値の総計を示していますが、人口×生産性の合計です。
人口が着実に増えていく国のほうが、このGDPが伸びていきやすいものです。

この観点で考えると、これから世界的に例の無い急激な人口減少社会を迎える日本は厳しくなることが予想されますし、そのために政府が生産性を上げるための「働き方改革」に本腰を入れて取り組んでいます。

「働き方改革」は労働者を守ることを目的としたものではなく、労働生産性を上げることを目的としていることを、あえて付け加えておきたいと思います。

イノベーションが起きている分野に投資を行う

イノベーションとは革新のことで、生産技術の変化や新しい市場や新製品の開発、新資源の獲得などのことをいいます。
このイノベーションにより投資需要や消費需要が刺激され,経済の新たな好況局面が作り出されるため、イノベーションは経済発展の最も主導的な要因であるとされています。

90年代半ばのウインドウズ95の登場、2007年のiphone誕生以降のスマートフォンの爆発的普及はイノベーションの代表例で、最近のAI(人工知能)、それに電気や水素で動く自動車なども新しくイノベーションが起きている分野といえるでしょう。

金融の投入量が増加している地域に投資を行う

中央銀行が行う金融政策の手段としては、主に金利の上げ下げと、市場に送り込む資金量調整の二つの手段がありますが、市場に送り込む資金量が増えている地域は株式や不動産などに投資を行うリスクマネーが増えるため、株価や資産価格の上昇を招きやすく、投資先として魅力があります。
そのためプライベートバンクを含む機関投資家は、それぞれの地域の中央銀行の政策に常に目を光らせています。

ちなみに足元の日本の状況はというと、日本銀行は毎年80兆円の資金を市場に送り込む政策を止めたとは認めてないものの、実際の資金の投入量は減りつつあります。

潜在的な経済成長力に目を向ける

この3点をまとめるとすれば、潜在的な経済成長力がある国・地域または分野に投資を行うということです。
経済が成長をする(景気が良くなる)ことで、

インフレーション(物価の上昇)

企業の売り上げが増加

利益の増加(株主配当の増加)

株価の上昇

このような循環が起きるので、株価は上がっていくためです。

また、長期的な観点で見た時に、生産性の指標である一人当たりGDPの伸びと株価には相関性がありますので、これから生産性が高くなっていきそうな新興国などに投資を行うと、その「成長の恩恵」を得られると思います。

とくに「5000ドルの壁」などという言葉があるように、一人当たりのGDPが3000ドル~5000ドルの範囲にある低所得国は、5000ドルを超えるまでは高成長を続けることが多いものです。
その一方で、5000ドルを超えると、「中所得国の罠」といい、経済成長率が下がっていく傾向があります。
現在の中国の経済成長率が6%台まで低下したのも、経済成長の過程で起こる当然の事象といえるでしょう。

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老後のお金の不安解消アドバイザー(ファイナンシャルプランナー) 愛知県名古屋市生まれ 福岡県春日市在住 老後のお金の不安を解消する、ライフプランと資産運用&資産管理の専門家 「90歳まで安心のライフプラン」を合言葉にして、豊かな人生の実現に向けたライフプラン作りの支援を行っている。 独立から約17年にわたり相談業務を中心に実務派ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ライフプランや資産運用などのお金のことについて年間100回近い講演や、マネー雑誌やコラム等の原稿執筆を行うなど幅広く活動をしている。 <主なメディア実績> 読売新聞・朝日新聞・朝日新聞AERA・東洋経済・財界九州・エコノミスト・マネープラス・FPジャーナル・ファイナンシャルアドバイザー・TVQ九州放送「九州けいざいNOW」・FBS福岡放送「めんたいワイド」・九州朝日放送「ニュースぴあ」ほか
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