本当に加入する必要がある保険は何なのか?
前回は損害保険について書きましたので、今回は生命保険と所得補償保険、それと「第三分野の保険」と呼ばれる医療保険・ガン保険のことについて書きたいと思います。
共働き世帯の増加によって、生命保険の必要性は低下
共働き世帯の増加によって、以前ほど生命保険の必要性はなくなってきています。
しかし、稼ぎ手となる家族が亡くなった時に、遺族基礎年金や遺族厚生年金からの収入や、自治体からの補助だけでは生活費や教育費などが足りないこともあるかもしれません。
万一の場合に残された配偶者が働いて、その収入で不足分を補えれば問題ありませんが、何らかの事情で働けないということも考えられます。
それに長年専業主婦でいた場合などは、仕事への復帰が難しいケースもあるかもしれません。
本人や家族が健康問題を抱えていたり、親の介護など何か理由があって働くことが難しいケースもあります。
そのような場合はある程度しっかりと生命保険に加入して、稼ぎ手となる家族が亡くなった時に備えておく必要があるでしょう。
働けなくなってしまうリスクに備える所得補償保険
近年クローズアップをされているのが病気やケガ等の理由によって、長期間に渡って働けなくなってしまうリスクです。
仕事中のケガなど業務上の理由で働けなくなった場合は、労災保険から補償が受けられます。
しかし、万一業務外の理由で病気やケガで働けない状態になってしまい、給与がもらえなくなってしまった場合は、約1年6ヶ月の間は健康保険の傷病手当金で給与の約3分の2が支給されますが、その後の保障は障害年金に頼ることになってしまいます。
そのため働けなくなってしまうリスクというのは相当大きいものとして考え、基本的には保険に加入することで備えたほうがいいと思います。
これまで大手損害保険会社の営業戦略が自動車保険、火災保険に偏っていたので、日本ではこのような働けないリスクに備える所得補償保険の普及が遅れていました。
そのため少し前までは個人向けの長期の所得補償保険は、日立キャピタル損害保険の「リビングエール」か、ライフネット生命の「働く人の保険」くらいしか選択肢がありませんでしたが、近年は生命保険会社も含めてこの所得補償の分野に参入し、次々と新商品が発売されています。
ガンは特別に医療費が高い病気ではない
ここでついでにガン保険のことに触れたいと思います。
まず知っておかなくてはいけないことは、ガンに罹って治療を行った場合でも、健康保険の高額療養費制度の対象になるということです。
また、最近のガン治療は入院の短期化が顕著で、脳血管疾患や高血圧性疾患などの他の傷病に比べて、ガンの入院日数は短くなっています。
そのため先進医療や自由診療のような公的医療保険の対象にならない部分を外して考えれば、ガンが特別に医療費が高い病気だということはありません。
しかし、医療技術の進歩によってガンが治りやすい病気になってきたことで、結果的に闘病期間が長くなってきているのも事実です。
そこでガンの保障に関しては入院給付金よりも、まとまった治療費用を準備できる多額の診断給付金が出るタイプのガン保険で備えるか、または所得補償保険で就業不能リスクに備えるという選び方を行ったほうが賢いと思います。
もちろん家計に余裕があって保険料を負担できるのであれば、ガン保険と所得補償保険の両方の保険で備えるというのもあっていいと思います。
ちなみに参考までにお伝えしておくと、私が定期的にアドバイスをさせていただいているお客様の約9割はガン保険には加入していません。
ある程度貯金を持っている方が多いことや、医師・薬剤師・看護師といったお客様に多いこともあって、皆さん医療事情に詳しく、多くの方がガン保険に加入することよりも、ガンにならないための健康作りや、ガンを早期に発見できるように毎年の検査のほうになるべくコストをかけることを選択しています。
そのほうがガン保険に支払う保険料に相当する額でしっかりとした検査が受けられますし、最近はガンは早期発見できれば治る確率が高くなっているので、「保険の給付金はたくさんもらったけどガンの発見が遅かった」なんて事態になってしまうことが少なく、結果的に長生きできる可能性は高くなると考えているからです。
そしてガンになってしまった場合の経済的リスクについては貯蓄をふやしていくことと、所得補償保険でカバーしていくようにしてもらうことが多くなっています。
認知症は起こりうることとして、貯蓄で備える
前回の損害保険の部分を含め、個人が保険で備えておかなくてはいけない大きなリスクというのは、基本的にはここまでではないでしょうか?
もちろんケガのリスクが高いスポーツ等をしいる人は傷害保険に加入したほうがいいですし、海外旅行に行く場合は海外旅行保険に入る必要はあるでしょう。
しかし、医療保険については健康保険の高額療養費で多額の負担にならないようにセーフティーネットが出来ていますし、高額の自己負担が発生するということで保険会社が広告に使うことが多い先進医療も、実際は数万円から数十万円程度で済んでしまうことがほとんどで、100万円以上するケースは年間2822件しか行われていません(厚生労働省、平成30年度実績報告)。
また、最近は認知症に備える保険などが次々と発売されていますが、2025年には65歳以上の高齢者の内、約5人に1人が認知症になると予測をされていることを考慮すれっば(内閣府、平成29年版高齢社会白書)、認知症は人生で起こりうることとして、貯蓄のほうで備えるべきだと思います。
このように本当に保険とは一体何なのかを冷静に考えてみることで、無駄な保険に加入してしまうことを防ぎ、保険料負担の削減が図れるはずです。
万一に備えてたくさん保険に加入しても、けっして豊かにはなれません。
できるだけ無駄な保険料負担を減らして、貯蓄をふやしていったほうがより豊かな人生を過ごせると思いますので、この機会に本当に必要な保険が何なのかを考えてもらいたいものです。
久保 逸郎
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