日本銀行によるマイナス金利政策の影響で、日本国内では超低金利の状況が続いています。
金融緩和の効果で追い風が吹いていた株式市場のほうも、今年2月以降不安定な状況が続いており、ピークアウトの様相が窺えます。
その一方で、インフレ率(消費者物価指数)は今年に入って世界的に上昇基調となっており、大切なお金の実質的価値を守ることが大変難しくなりつつあります。
このような難しい局面ではどのように資産を守っていけばいいのでしょうか?
そこで今回は200年以上に渡って富裕層の資産管理を行ってきたスイスのプライベートバンクの資産保全の考え方をご紹介します。
グローバルの観点で資産を保全する
私達日本人が日頃から使っている通貨は円です。
超低金利の環境とはいえ預金金利はマイナスにはなっていませんから、預貯金にお金を置いておけば、基本的にそのお金(額面)が減ることはありません。
しかし、その円も世界的な視点で考えれば為替の影響を受けています。
仮に現在1米ドル110円すると、為替が円高に動いて1米ドル100円になれば、世界的にはその円の価値が10%上がったことになります。その反対に為替が円安の方向に動いて、1米ドル120円なった場合、その価値が約8%下がってしまいます。
日本の食料自給率はカロリーベースで約40%しかありません。エネルギーや資源に関しては、水以外の資源はほぼ全て輸入に頼っていると言っても過言ではありません。
どうしても輸入に頼らなければいけないのが日本なので、為替が円安に振れてしまった場合、海外での食料やエネルギー・資源の購入にはより多くお金を払わないといけないことになります。
これはほんの一例ですが、同じように世界経済は結びついているので、大切なお金の価値を守るためにも、グローバルの観点は欠かすことができません。
国際分散投資
下記の3つは投資を行う場合の3原則です。
①人口が伸びている地域に投資を行う
②イノベーションが起きている分野に投資を行う
③金融の投入量が増加している地域に投資を行う
この3つについては次回に詳しく書きたいと思いますが、あえて一言でまとめるとすれば「潜在的な経済成長力がある国・地域または分野に投資を行う」ということです。
経済成長を果たせば、企業の売り上げが増え、利益も増えることになるので、株価は上がっていくことになります。
セミナーなどのさまざまな場面でいつも個人的に強調していることですが、長期的な観点で見た時に、生産性の指標である一人当たりGDPの伸びと株価には相関性がありますので、これから生産性が高くなっていきそうな新興国などに投資を行うと、その投資対象の「成長の恩恵」を得られると思います。
経済成長率が低い日本だけを投資対象にしているのは大変もったいないと思いますので、世界に目を向けてみましょう。
割安な資産に投資を行う(バリュエーション)
バリュエーションとは投資の価値計算や事業の経済性評価のことを指します。
株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)、配当利回りなどを見ながら企業の利益・資産などの企業価値評価を行い、本来の企業価値と現在の株価を比較して、株価が相対的に割安か割高かを判断して、割安なタイミングで投資を行います。
このバリュエーションによる投資先の選定にはさまざまな情報を評価する専門知識や経験を必要としますので、一般の個人投資家の場合は「資産価格が高いタイミングでは購入しない」ことを大事にしていただければ大丈夫です。
とくに日本人の場合は、海外の投資家とは反対で、高値のタイミングで投資を行ってしまうことが多い傾向にありますので注意をしてください。
このように「グローバルの観点で資産を保全する」「グローバル分散投資を行う」「割安な資産に投資を行う」ことは、世界の富裕層が資産を預けているスイスのプライベートバンクの資産保全の鉄則です。
世界経済のピークアウトの時期を迎え、資産保全が難しくなってきた時期だからこそ、このような基本のポイントを押さえていただきたいと思います。
久保 逸郎
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