近年はコストの安さから ETF やインデックスファンドに投資を行おうとする投資家が増えています。
ブルームバーグの発表によれば、米国では昨年(2019年)の時点で株式ファンドの資金流入において、「パッシブ運用(ETF、インデックスファンド)」が「アクティブ運用」を上回るようになったようです。
また、最近は米国や日本と違ってアクティブファンドの割合が高い欧州でも、若い世代の投資家を中心に少しずつ「パッシブ運用」の割合が拡大しているようです。
マネー雑誌やインターネットの世界でも「とにかくコストの安いETFやインデックスファンドを選ぶべき」という意見が多くなっていますが、ファンド選びにおいてコストというのは一部の要素でしかありません。
良質なアクティブファンドは、パッシブに勝る
そして私自身がとくに心配していることは、「ベンチマークを上回る運用成績を上げているアクティブファンドは少数だから、コストの安いインデックスファンドやETFを買っておけばいい」という意見にあまりにも偏り過ぎていることです。
たしかにプロの運用担当者(ファンドマネージャー)が目利きをして銘柄選択をしていても、実際に指数を上回る運用成果を実現できているファンドのほうが少ないというのは、数字だけを見れば事実です。
しかし、それはよりリスクの低い運用を目指しているファンドやテーマ型、指数を上回る運用成果を目指していないファンドなど、本来は比較対象とするべきではないものまで含んでいての数字のため、そのまま鵜呑みにしてはいけません。
実際に近年のような情報社会において人気があるファンドは、ベンチマークを上回る良好な運用成績を出しているものが多くなっている傾向にあります。
例えば過去10年(2011年4月~2021年3月)の期間で、モーニングスター社のカテゴリー区分で日本株を投資対象とするもので、純資産残高が大きいアクティブファンド上位10本をみると、10本中6本がTOPIXを上回る運用成績になっています。
この結果が示すように「良質なアクティブファンドは、パッシブに勝る」というのも一つの事実なのです。
さらにリターンがTOPIXを下回っている4本が悪いファンドかというと、そういうことではありません。
例えば、さわかみファンド(さわかみ投信)は10年以上の期間で見れば運用成績は良好で、先日株式会社格付投資情報センターが発表する「R&Iファンド大賞2021」(投資信託20 年/国内株式バリュー部門)で最優秀ファンド賞を受賞しています。
また、結い2101(鎌倉投信)は「ゆっくりと安定した運用を目指しています」というファンドの目標の通りの運用が行われており、この期間(2011年4月~2021年3月)のリスクは9.22%で、米国債並みの水準です。
TOPIXのリスク(19.59%)を大幅に下回っており、日本株に投資を行うファンドの中では極めて価格変動が小さい安定運用を実現しています。
下記のグラフは下降相場での強さを見るバッティングアベレージですが、とくに下降相場での強さが目に付きますね。
安定運用を望む投資家にとっては大変良いファンドといえるのではないでしょうか。
国内株式10ファンドバッティングアベレージ2021.6.22
コストだけでファンドを選んでしまうと、貴重な投資機会を失う可能性
たしかに情報の少ない個人投資家が長期的に指数を上回る運用成果を上げているファンドを見つけることは難しいため、コスト優先でファンドを選ぶという基準も間違ってはいませんが、ほんの一部分だけで判断をしてしまうのではなく、多角的な視点で物事を判断するのが賢明な投資家としてのあるべき姿だと思います。
それに「パッシブ運用」と「アクティブ運用」のどちらが優れているかという議論は、長年続けられてきた議論ですが、私自身はどちらが有利であるかと決めつけるものではなく、パッシブ優位の時期とアクティブ優位の時期が繰り返されるものだと考えています。
ポストコロナはアルファベットのKの文字のように、業績が上向く企業とそうでない企業に分かれる時代だといわれています。
そのため外資系運用会社のレポートなどを読んでいると、今後の中長期的な運用戦略として「選別」や「厳選」という言葉がよく使われています。
コストの視点だけでファンドを選んでしまうと、貴重な投資機会を失うことにも繋がりかねないため、投資家の皆さんには視野を広げて選択してもらいたいですね。
久保 逸郎
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