自営業者の場合は定年がないため、自分自身でいつまで働くかを決めることができるという点は、会社員と比べて、老後資金の準備という面では大きな利点だと思います。
もちろん体力を使う仕事のように、職種によっては高年齢まで働くことが難しいこともあるかもしれません。
しかし、その場合はマネジメント側に回るなど、仕事を継続できる環境を整えれば、生涯収入を得ることも可能になります。
そのため自営業者の方は日頃から自分自身を資産と考えて、その資産を有効活用するために、とにかく健康管理に気を付けるようにしてもらいたいですね。
(しかし、それでも万一の事を想定しておかなくてはいけません。自営業者の場合は 会社員と比べて社会保障が少ないため、その部分は民間の保険を活用して補っておく必要があります。)
このことを踏まえたの上で、老後資金の準備については基本的に3つの制度を上手に活用したほうがいいと考えています。
小規模企業共済は予定利率が低く、インフレに弱い
一番目は小規模企業共済です。
小規模企業共済は従業員20人(サービス業などは原則5人)以下の個人事業主や役員が加入できます。
掛金は月額1000円から7万円までの範囲で選択でき、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です 。
共済金は一括受取が基本で、要件を満たした場合に分割受取(期間10年または15年)や、一括受取と分割受取の併用が可能になります。
小規模企業共済の最大のメリットは国民年金基金や個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)の掛金とは、控除が別枠である点です。
個人事業主の場合、小規模企業共済の掛金上である月額70,000円と、iDeCoの掛金上限の月額68,000円を合わせると、年間で165万6,000円まで積み立てることができるため、大きな節税をしながら老後資金準備を行うことが出来ます。
また、小規模企業共済には貸付制度があり、積み立てた掛金の範囲内(掛金納付月数により掛け金の7割~9割)まて資金を借りることができます。
老後資金の準備するためには貸付制度を利用しないほうが良いのは当然ですが、一時的に資金繰りが厳しくなった時などに借り入れが出来る点は、浮き沈みの大きい自営業者にとっては安心材料ではないでしょうか?
一方、デメリットは予定利率が1%と低く、インフレに弱いことです。
超低金利の影響で、運用環境は年々厳しくなっていて、2019年の運用利回りは -0.07%まで落ち込んでいます。
「小規模企業共済資産運用の基本方針」に基づいた安全な運用が行われているため、国内債券で約8割を運用する形になっており、今後の制度財政の悪化が懸念されます。
財政悪化が懸念される国民年金基金
次に紹介するのが国民年金基金です。
国民年金基金は国民年金に上乗せをする形で、将来もらえる年金が増える制度です。
掛金の上限は月額68000円で、もちろん掛金の全額が所得控除の対象になりますが、国民年金基金の控除の枠はiDeCoと共通のため、 iDeCoと合わせて68000円が上限ということには要注意です。
国民年金基金のメリットは、給付型のタイプを自分で選択できる点です。
掛金の範囲内で、何口加入するかによって受け取る年金額が決まります。
終身年金への加入が基本であることは、とくに厚生年金に加入していない自営業者にとっては有難いのではないでしょうか。
さらに追加で有期年金に加入することもでき、自分のライフプランに合わせて自由に設計することができる点は、国民年金基金の利点だと思います。
国民年金基金のデメリットは、国民年金の付加保険料制度と同時に使えないことです。
また、加入者の減少と共に、財政が急激に悪化していることも気になります。
純資産額から責任準備金を差し引いた実質過不足は1兆4778億(令和元年度)まで膨らんでおり、制度の存続すら危ぶまれる状況になっています。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は一定の投資知識が必要
個人型確定拠出年金(iDeCo)は国民年金基金と同様に、掛金の上限は68000円で、全額が所得控除の対象になります。
iDeCoの場合は所得控除に加えて、さらに運用益も非課税であるため、投資知識を活かして積極的に資産形成を行いたい人に向いています。
金融機関によって運用商品の選択肢やコストが異なってくる点には注意が必要ですが、運用の自由度が高く、何よりも制度の事情に左右されないで、あくまでも個人資産として資産作りが行えるメリットは大きいと思われます。
また、株式に投資を行う投資信託を運用対象に用いることによって、インフレにも備えることができます。
その一方で、デメリットは自分自身で運用を行わなければいけないこと。
元本割れのリスクもあるため、投資の知識を持たない人にとっては少々ハードルが高いかもしれません。
おすすめは小規模企業共済とiDeCoの組み合わせ
このように制度それぞれでメリットとデメリットがあります。
個人的にはiDeCoの商品ラインアップの中から株式ファンドを選び、インフレに強い資産とされる株式に投資することで、小規模企業共済のインフレに弱いという欠点をカバーできるため、小規模企業共済とiDeCoの組み合わせが最適ではないかと考えています。
この2つの制度は、それぞれ別枠として掛金の控除が受けられることも大きいですからね。
久保 逸郎
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