国内の公募追加型株式投信(ETF を除く)の純資産総額の内、約1割をREITファンドが占めています。
国内の投資家にとってREITというのは、それだけ影響が大きい資産クラスですが、今年2月~3月にかけてはコロナショックで瞬間的に大きく暴落したため、今後の動向が気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今後の見通しについて触れてみたいと思います。
REITを一括りに考えてしまってはいけない
今後のREIT市場の見通しですが、大変判断が難しい状況です。
それは「REIT」と一言で表しても、企業などが利用する「オフィスセクター」や、ショッピングモールなどの商業施設が含まれる「小売セクター」、賃貸マンションなどの「住宅セクター」、宿泊施設等の「ホテルセクター」などがあり、それぞれ全く用途が異なっているため。
さらに最近はeコマースを支える「物流セクター」が存在感を高めていますし、5 Gなどの基盤サービスを提供する「データセンターセクター」なども期待されます。
このように様々な用途に分かれていて、それぞれ特徴が異なっているため、REITと言っても一括りに考えてしまってはいけないのです。
それではセクター別の今後の動向についてはどうでしょうか。
オフィスセクター
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業が仕事のやり方を抜本的に見直しています。
日本国内を例に挙げると、7月6日に富士通がグループ会社社員約8万人に対して、在宅勤務を標準とする働き方に移行すると発表しました。
また、日立も2021年4月から社員約3万3000人の約7割を対象に、週2~3日を在宅勤務にすると発表しています。
このような動きの背景には、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言下にあった時、企業はテレワークの導入に踏み切らざるを得なくなりましたが、結果的にテレワークのノウハウの蓄積が進んだことがあります。
また、これまで印鑑を利用していたハンコ文化を見直して、印鑑を使わないでも仕事ができる仕組みに改善したり、時間管理をベースとする人事評価体系からジョブ型への移行することは十分可能であり、むしろこのような動きはいずれ生産性の向上につながってくると経営者が増えてきたこともありますね。
このような変化は世界的な潮流となっていて、むしろ日本は大幅に遅れている状況になっています。
それではREITの中心であるオフィス需要は今後どのようになっていくのでしょうか?
この点については二つの見方があります。
一つは在宅勤務・テレワークの広がりに伴い、特に都市部を中心にオフィス需要が減少していくという見方です。
企業にとっては、賃料が高い都市部のオフィス面積を小さくすることで、オフィスコストを大幅に削減できるメリットは大変大きいものです。
一方で、従業員にとっても新型コロナウイルスへの感染リスクを気にしながら通勤する必要がないため、安心感がありますし、時間の使い方や居住場所の選択肢が広がりますね。
このように企業と従業員の双方にとってメリットがあるため、オフィス需要の減少は今後のメインシナリオになってくるはずです。
特に若手社員を中心に在宅勤務・テレワークの導入希望者が増えてくると思うため、在宅勤務・テレワークの導入は今後優秀な社員を確保するための必須条件になってくると思います。
企業が意思決定にかかる時間や賃貸契約解除までの告知期間を考えると、本格的なオフィス需要の減少は 今年の秋以降になると思いますが、今後都市部のオフィス物件の空室率が大幅に上昇する可能性があるのではないでしょうか。
もう一つの見方は、新型コロナウイルスへの対応として、従業員を出社させるためにはソーシャルディスタンスを確保しなければいけません。
そのため企業はオフィスの面積を広げていくという見方です。
どうしても出社しなければ仕事が回らないような業務を行う企業は、このような対応を迫られると思いますので、その場合はオフィス需要の増加に繋がってくるでしょう。
いずれにしてもREITの中心であるオフィス需要は、コロナ禍での新しい生活様式・価値観とともに大きく変化していくことが予想されます。
久保 逸郎
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