現在掛金を納付できる年齢の上限が60歳までになっている確定拠出年金(イデコ)ですが、年々日本人の平均寿命が延びてきて、人生100年時代とも言われる時代になってきたにもかかわらず、掛金を納付できるのが60歳までしか行なうことができないというのは短過ぎるという声があります。
政府は高年齢者雇用安定法で、65歳までは全ての希望者を雇用することを企業に義務付けており、実際にその定年を65歳以上に延ばす企業も出始めてきています。
そのような状況にもかかわらず、現時点では確定拠出年金の掛け金が60歳までしか拠出できないということで、確定拠出年金制度が労働者の実態に合わなくなっているとの声が高まっているのです。
厚生労働省が65歳までの加入延長を検討
そこで厚生労働省が検討しているのが、確定拠出年金の掛金を拠出できる年齢の上限を65歳まで引き上げようとするものです。
掛金をかける期間が長くなればなるほど、老後に受け取れる年金は増えることになるので、今後先細りが予想される公的年金を補ってくれることを期待しているのかもしれません。
これは総務省のデータですが、2017年の60歳から64歳までの就業率は66%になっていて、2001年の確定拠出年金の導入当時と比べれば約15ポイントも上昇しているそうです。
60歳以降も働いて給料をもらっている方の中には、今すぐに年金をもらわなくても生活ができるという人も多いと思われます。
そのような場合は60歳を超えても給料の中から確定拠出年金の掛金をかけていって、いずれ年金だけで生活をしなければならなくなった時に備えて、老後資金として蓄えていきたいという人もいることでしょう。
税収の減少から政府内での調整難航も考えられる
現時点では厚生労働省内で制度見直しの検討が行われている段階のようです。
昨年夏2018年8月31日付の日本経済新聞によれば、 就業率の推移などを踏まえて2022年度までに結論を出して、確定拠出年金法の改正案を国会に提出する予定のようです。
もしも、掛け金の拠出が5年伸びることになれば、現在毎月23000円の掛金を拠出できる会社員の場合で、最大138万円掛金を多く拠出できることになります。
毎月68000円の掛け金が上限となっている自営業者などの場合は、最大で408万円も多く出せることになりますから、これが決まった場合のメリットは大きくなりそうです。
その一方で、税制優遇の大きい確定拠出年金の拡充は、政府の立場からすると税収の減少につながります。
今後政府内での調整が難しくなる可能性もありますが、今後も平均寿命が延びていくことが予想されており、国民の就業年齢が今後も上がっていくことになると思われますので、そのような実態に合わせた制度のあり方に変えていってもらいたいものです。
現状60歳の受け取り開始年齢は延ばせないのではないか
掛金の拠出が65歳まで行えるようになったとしても、現状60歳以降になっている確定拠出年金の老齢年金の受給開始年齢については延ばされることはないのではないでしょうか。
これは確定拠出年金の制度が自分自身が掛金を拠出してためていく自分年金であるので、自分で貯めた資産の受け取り開始年齢を政府が変えてしまうと、財産権の侵害に当たる可能性があると思われるからです。
この点については、過去に受給開始年齢の引き上げが行われ、さらに年齢を引き上げることが検討されている公的年金(国民年金・厚生年金)とは異なるところですね。
とくに50歳以上で、掛金を拠出できる期間が短いこと等を理由に、確定拠出年金の加入を迷われていた方にとっては、今後の行方は気になるところだと思います。
新聞やインターネットなどを活用して情報収集に努めてください。
久保 逸郎
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