新型コロナウイルスの影響で、マーケットは大荒れですね。
ここ数年の株式市場は長年続いた金融緩和による行き過ぎ(バブル状態)でしたから、どこかのタイミングで大幅調整を余儀なくされるだろうと思い、「リスクオフに備えよう」「景気後退に備えよう」などと繰り返しお伝えしてきましたが、ウイルスが大幅調整の引き金になるとは予想していませんでした。
また、今回のマーケットの動きの速さには大変驚かされました。
「換金売り」が起きてしまった背景
今回のコロナ・ショックの特徴ですが、ウイルスの拡大を抑えるための突然の経済活動停止で、世の中のお金の流れが止まってしまい、資金繰りに窮した企業や個人投資家がとにかく換金できるものは何でも売ってしまうという、いわゆる「換金売り」が起きたことではないでしょうか。
その結果として、リーマン・ショックの時でも価格が下がらないで、むしろ安全資産として価格が上がったような資産までもが、今回は下がってしまいました。
このような換金売りが起きてしまった背景には、あまり預貯金を持たず、株式や投資信託などのリスク資産のウエイトが高い、米国の家計構造の特徴があるような気がします。
筆者はファイナンシャルプランナー(FP)という立場なので、「万一に備えて、半年分の生活費程度はいつでも引き出せる流動性資金(預貯金など)に置いておきましょう」と日頃からアドバイスを行っていますが、今回改めてその必要性を感じている次第です。
早い回復が期待できる資産クラス
今後のマーケット環境については、新型コロナウイルスの感染拡大が一定程度収まらないと、将来を見通すことはできない状況ではありますが、個人的には以下の資産クラスは比較的早期の回復が期待できるのではないかと考えています。
①金(GOLD)
「有事の金」などと言われるように、金はリスク回避局面に強い資産です。
金は希少性が高く、永遠の価値を持つといわれる実物資産であるためで、世界的に何か不安が広がると金が買われる傾向にあります。
しかし、今回のコロナ・ショックでは換金売りの影響で一瞬売られてしまい、1500ドル(トロイオンスあたり)を割り込む場面もありましたが、現在は1600ドルを超える水準にまで戻ってきています。(2020年3月25日時点)
コロナ・ショックによる経済的ダメージから回復するために、米国で大規模な量的金融緩和が行われること、また、低金利政策が続くことを踏まえると、米ドルと逆相関関係にある金の魅力は今後さらに高まっていくのではないでしょうか?
②公益企業の株式
公益企業とは、電力・ガス・水道・電話通信・石油供給・運輸・廃棄物処理といったような、私達の生活に欠かせないサービスを提供している企業のことです。
このような企業は、(一般的な民間企業に比べて)景気の影響を受けにくく、業績が比較的安定していますし、基本的にデフォルト(破綻)の心配がありませんので、一般的に「ディフェンシブ銘柄」の一つと言われています。
リーマン・ショックの株価が大幅下落した時でも、米国の公益企業の株価はむしろ上昇したくらいなのですが、今回のコロナ・ショックにおいては、換金売りの発生から、このような公益企業の株価まで大幅に下がってしまいました。
しかし、このような安全資産と言えるものまで下がってしまったことは、裏を返せば良質なものを安い価格で手に入れられるということですし、今後も公益企業には追い風となる低金利環境が続くことを考えれば、投資家にとっては千載一遇の好機かもしれません。
③超優良企業の株式
業界でトップシェアを誇っている企業、圧倒的な技術力を持っている企業の株式も、公益企業と同様に換金売りで、株価の大幅調整を余儀なくされています。しかし、このような超優良企業の株式は、マーケットが落ち着き始めた時に、いち早く買い戻しの対象になるのではないでしょうか。
とくに情報通信セクターや、医薬品セクター、生活必需品セクターの企業は、コロナ・ショックのダメージが比較的小さいと思うので、財務体質が良い企業の株式を選べば、これも狙い目だと考えています。
④米国REIT(リート)
コロナ・ショックの影響で米国リートは2割以上下がってしまいましたが、その結果として配当利回りは2月末時点で4.19%まで上昇しています。(参考:三菱UFJ国際投信「リート・マーケット・マンスリー」)
また、低金利はリートにとって追い風になります。国債との利回り差を考えても、市場が落ち着いた段階で(新型コロナウイルスの収束が見通せるようになった段階で)、ある程度の水準(1200~1300ポイントあたり)までは買い戻されていくのではと考えています。
(2020年3月27日現在、1091ポイント「S&P先進国REIT指数(配当込み、現地通貨ベース)」)
⑤中国の株式
リーマン・ショックの時に、いち早く回復して、世界経済の回復に貢献したのは中国でした。
今回のコロナ・ショックでも中国株式は、米国や欧州・日本株式ほど大きく下がっていませんし、すでに中国は新型コロナウイルスが収束して、経済活動を再開し始めていることを考えれば、早期回復が期待できると思われます。
日本株はしばらく厳しい環境が続くか
このような資産クラスには、新型コロナウイルスの収束が見通せるせるようになった段階での早い回復の期待をしている一方で、厳しい局面になると予想しているのが日本株です。
もともと2018年あたりをピークに企業業績が落ち始めていたところに、消費税増税と新型コロナウイルスのダブルパンチ。
米中貿易摩擦問題も根本的な解決には至っていません。
日本銀行には金融緩和の余地がほぼない上、国と地方自治体が莫大な借金を抱えているため、大規模な財政支出政策も打ち出しにくい状況です。
そのため新型コロナウイルスの問題が収束したとしても、日本株は緩やかな回復にとどまる可能性が高いと考えています。
久保 逸郎
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